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【アセアン、きょう発足50周年】域内連携に新たな課題 対中国関係、イスラム過激派の脅威

投稿日:2017年8月8日 更新日:

 東南アジア諸国連合(アセアン)が8日、発足から50周年を迎えた。インドシナ紛争の激化など東西冷戦のさ中、「反共産主義の砦(とりで)」として結成された地域共同体が順調な経済成長を遂げ、「世界の成長センター」と呼ばれるなど国際社会での存在感を高めた。しかし、21世紀に入ると、経済、軍事両面で台頭する中国との関係、域内人口のかなりの部分を占めるイスラム教徒社会に忍び寄るイスラム過激派の影など、経済、治安はじめ多くの面で存在意義と結束を試されるこれまでにない厳しい局面に差し掛かっている。

 アセアンは1967年8月8日、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、シンガポールの5カ国が、地域の平和と安定、経済成長の促進などを目標に掲げた「バンコク宣言」を発表して発足した。その後、84年にブルネイ、インドシナ紛争終結を受けて95年から99年にかけてベトナム、ラオス、カンボジアのインドシナ3国とミャンマーが順次加盟し、現在の10カ国体制になった。域内総人口は約6億3000万人に達し、今や世界経済のサプライチェーンの重要拠点に組み込まれている。
 2015年末、将来の域内経済統合を目指すアセアン経済共同体(AEC)が発足し、域内関税の原則ゼロ、非関税障壁の撤廃、専門職労働者の域内移動の自由化実現などに向けて10カ国が動き出した。インドシナ半島中央に位置し、地政学的恩恵もあって東南アジアのハブとしての地位を固めたタイと周辺のCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)諸国の経済連携は強まる様相を見せ、新たな開発などの将来性に目を付けて日本、中国、韓国など域外国の資本流入が進み、「大メコン圏」の今後の発展にかける期待は大きい。
 しかし、半面で国民1人当たりの国内総生産(GDP)をみると、域内で最も豊かなシンガポールの約5万3000米ドル(国際通貨基金2015年統計)は最も貧しいカンボジアの同1230ドル(同)の43倍にも及び、域内国間の経済格差は著しい。
 そこに加盟国間の思惑の違いが出るが、その点を巧みに突いてアセアンでの存在感を高めているのが中国だ。アセアン加盟国の中のベトナム、フィリピンとは長年、南シナ海の領有権をめぐり対立してきたものの、当事国でないカンボジアやラオスに経済援助を提供することでアセアン全体の空気が反中に傾くことを食い止めようとしている。昨年、フィリピンに誕生したドゥテルテ大統領の新政権はそれまでの反中姿勢を転換して、領有権問題を棚上げしても中国との経済的結びつき強化に動き出している。年に1度の定期外相会議でアセアンは昨年、今年と続けて南シナ海問題で中国を刺激しないよう配慮した内容の外相会議共同声明をまとめた。
 そのほか、ここに来て各国が神経をとがらせているのがイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の脅威だ。域内国の中でもインドネシア、マレーシア、ブルネイはイスラム教徒が国民の多数派。そしてインドネシア、マレーシアは自国民のIS戦闘員への参加が確認されている。フィリピン南部ミンダナオ島マラウィの一部をISに忠誠を示す戦闘員が占拠する事件も起きた。
 域内各国は自国へのISテロリストの潜入を防ぐべく、情報交換と入国管理体制の強化を進めているが、各国の治安当局間の協力体制は不十分で、アセアンという共同体に新たな課題を突き付けている。

 

 

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